「もう正社員なんて無理。アルバイトがいい」
仕事がしんどくなったとき、私は本気でそう思っていました。
毎日仕事に追われる。
責任も重い。
人間関係にも気を遣う。
家に帰ってからも仕事のことを考えてしまう。
「こんな生活を何十年も続けるの?」
そんなことを考えているうちに、
「いっそアルバイトや派遣で働いたほうが、もっと楽なんじゃない?」
と思うようになりました。
もちろん、正社員ではない働き方にも大変なことはあると思います。
それでも当時の私は、
「給料が下がってもいい。心穏やかに暮らせるなら、それでいい」
と思っていました。
そして実際に私は、その気持ちのまま、次の仕事を決めずに正社員を辞めました。
辞めた直後は、
「これで自由になれる」
という気持ちのほうが大きかったと思います。
でも、しばらく経ってから、少しずつ別のことにも気づきました。
私が手放そうとしていたのは、「正社員であること」だけじゃなかったんだ。
正社員として働いていたからこそ、当たり前のように受け取っていたものもあったんです。
今回は、そんな私が正社員を辞めてから改めて考えた、
「正社員として働いていたからこそ得られていたもの」について書いてみます。
正社員を辞めて、たしかに楽になった
まず、正社員を辞めたこと自体を後悔しているわけではありません。
実際、楽になったことはたくさんあります。
朝起きて、
「今日も仕事か……」
と思わなくていい。
嫌だった人間関係から離れられる。
仕事で何か起きたときに、自分が責任を背負わなければいけないというプレッシャーもなくなる。
平日の昼間に好きなことができる。
日曜日の夜に、
「明日仕事か……」
と憂鬱になることもない。
あれだけ辞めたいと思っていたのだから、辞めて楽になるのは当然でした。
だから、
「正社員を辞めたことは間違いだった」
とは思っていません。
ただ、自由な時間が増えて、少し落ち着いて考えられるようになったとき、
「私が嫌だったのは、本当に“正社員”という働き方そのものだったのかな?」
と思うようになりました。
「給料が下がってもいい」は、本当に全部を手放してもいいということ?
「心が楽になるなら、給料が下がってもいい」
仕事がしんどいときには、そう思ってしまいます。
でも、少し冷静になって考えてみると、
「給料が下がってもいい」ということと、
「給料が下がることで失うものも全部いらない」ということは、別の話なんじゃないか。
と思ったんです。
たとえば、収入が減ったら、自分の生活はどう変わるんだろう。
今まで当たり前にできていたことの中に、
実は、安定した収入があったからできていたこと
がたくさんありました。
給料は「生活費」だけじゃなかった
正社員として働いていた頃、毎月お給料が入ってくることを、私はあまり深く考えていませんでした。
家賃を払う。
食費を払う。
光熱費を払う。
奨学金を返済する。
それができればいい。
そんなふうに、
「給料=生活するためのお金」
くらいに考えていた気がします。
でも、実際にはそれだけではありませんでした。
美容院に行く。
旅行に行く。
友達の誕生日にプレゼントを買う。
カフェでちょっと贅沢する。
欲しかった服を買う。
趣味にお金を使う。
こういうことも、全部お給料があったからできていました。
しかも当時は、それを特別なことだと思っていませんでした。
美容院に行くときも、
「今月ちょっと使いすぎたかな……」
と毎回悩む必要はなかった。
友達の誕生日に、
「これプレゼントしたい!」
と思ったものを、値段だけを理由に諦めることもなかった。
「久しぶりに旅行行こう!」
と誘われたときも、お金だけを理由に断ることはなかった。
会社員だった頃は、こういう生活を「普通の日常」だと思っていました。
でも今振り返ると、
その普通の日常を支えていたのは、毎月安定して入ってくるお給料だったんだな
と思います。
「好きなものを選べる」ことも、お金の自由だった
お金の自由というと、
「高いものを好きなだけ買える」
みたいなイメージがあります。
でも、私が気づいたのは、もっと小さな自由でした。
安いものだけを選ばなくてもいい。
欲しいと思ったものを買える。
たまにはちょっといいランチに行ける。
旅行で何もかも最安値にしなくてもいい。
趣味にお金を使える。
友達との予定を、お金だけを理由に断らなくてもいい。
「これ、欲しいな」と思ったものを、値段を見て即座に諦めなくてもいい。
こういう小さな選択肢が、毎日の中にたくさんありました。
つまり、お金って、
生きていくためだけに必要なものではなかった。
自分の「やりたい」を選ぶためにも使っていたんですよね。
だから、
「給料が下がってもいいから自由になりたい」
と思ったときには、
「じゃあ、今までお金があったことで得ていた自由はどうなる?」
というところまで考えてみてもよかったんだと思います。
毎月決まった日にお金が入ることも、ひとつの安心だった
もうひとつ、正社員を辞めてから強く感じたのが、
「毎月お給料が入ってくる」という安心感です。
正社員として働いていた頃は、
「来月の家賃、どうしよう」
ではなく、
「来月もだいたいこれくらい入ってくる」
という前提で生活していました。
家賃。
食費。
光熱費。
通信費。
貯金。
趣味のお金。
毎月の生活を、ある程度見通すことができる。
もちろん、正社員だから絶対に安心というわけではありません。
それでも、
「来月も収入がある」
という前提があるだけで、無意識に心の余裕ができていたんだと思います。
正社員を辞めてからは、今まで当たり前だった「収入がある状態」そのものを、自分で作っていかなければならなくなりました。
そこで初めて、
安定した収入って、それ自体がひとつの安心だったんだな
と実感しました。
「休んでもお金がもらえる」って、実はすごい
私が正社員として働いていた職場では、使いやすい環境で、有給休暇がありました。
旅行に行くために有給を使っても、
「休んだ日=その日の収入がゼロ」
になるわけではありません。
土日祝などの休日もあり、年間休日は128日でした。
長期休暇を利用して旅行することもできました。
当時は、それを「普通のこと」だと思っていました。
でも、改めて考えてみると、
「休む時間」と「収入」が完全に切り離されていたわけではなかった。
これも、私にとっては大きなメリットでした。
「時間の自由」と「お金の安心」が、同時にあったんです。
給料以外にも、受け取っていたものがあった
正社員として働いていたときには、給料以外にも会社から受け取っていたものがありました。
社会保険。
厚生年金。
雇用保険。
会社独自の福利厚生。
住宅手当。
もちろん、これらは勤務先や勤務条件によって違います。
でも、私の場合は、こうしたものも正社員として働いていたから受け取れていたものでした。
普段は、あまり意識していませんでした。
毎月の給料明細を見て、
「今月もこれくらい入ったな」
と思うくらい。
でも辞めてから振り返ってみると、
「私が受け取っていたのは、給料だけじゃなかったんだ」
と気づきました。
「仕事がある」という安心も、思っていた以上に大きかった
そして、今まさに次の仕事を探していて、強く感じていることがあります。
それは、
「仕事を自分で探し続けなくていい」ということも、ひとつの恩恵だった
ということです。
仕事を辞めてからは、
求人を見る。
応募する。
書類を準備する。
面接を受ける。
条件を比較する。
「この仕事、自分に合うかな」と考える。
そして、
「そもそも次は何をしたいんだろう」
と考える。
正社員を辞めたことで自由になったはずなのに、仕事について考える時間はむしろ増えました。
正社員として働いていた頃は、
「来月もこの職場で働く」
ということが、ある程度決まっていました。
もちろん、それが苦しくて辞めたわけです。
でも、
「来月も働く場所がある」
「来月も収入がある」
という状態は、思っていた以上に安心できるものだったんだなと思います。
正社員=正解ではない。でも、非正規=楽とも限らない
ここまで書くと、
「じゃあ、正社員を続けたほうがいいってこと?」
と思われるかもしれません。
でも、そういう話ではありません。
正社員として働くことで、私の場合は、
安定した収入、休暇、福利厚生、社会保険、手当、そして仕事があることによる安心感
などを得られていました。
一方で、
責任の重さ、拘束時間、人間関係、仕事のストレス
もありました。
アルバイトや派遣社員など、正社員以外の働き方を選ぶことで、
負担が軽くなる部分もあると思います。
でも、収入や待遇、契約期間などが変わることで、新しい不安が生まれる可能性もあります。
だから、
「正社員か、アルバイトか」
だけで考えなくてもいい。
「正社員は嫌だから、非正規でいい」
と一気に決める前に、
「私は何が嫌なのか」
「何は残したいのか」
を考えてみてもいいんだと思います。
「正社員が向いていない」のではなく、「その働き方」が合っていなかったのかもしれない
「正社員に向いていない」
と思ったときって、
「じゃあ正社員を辞めるしかない」
と考えてしまいがちです。
私もそうでした。
でも、もしかすると、合わなかったのは「正社員」という雇用形態そのものではなく、
その会社での働き方だったのかもしれません。
たとえば、
残業が少ない。
人間関係が穏やか。
休日が多い。
責任範囲が明確。
リモートで働ける。
自分の得意なことを活かせる。
これまでの経験を活かして、経理など専門性のある仕事をする。
同じ「正社員」でも、環境が変われば、感じるストレスは違うかもしれません。
だから、
「正社員を辞める」
と決める前に、
「正社員のままでも、今より自分に合う働き方はないかな?」
と一度探してみるのも、ひとつの方法だと思います。
それでも、もちろん正社員を辞める選択をしていい
ここまで書きましたが、
だからといって、無理して正社員を続ける必要はありません。
本当に限界なら、辞めていい。
一度離れて、自分の生活を立て直してもいい。
アルバイトや派遣社員など、自分に合う働き方を選んでもいい。
私自身、実際に正社員を辞めたからこそ、見えたものがあります。
だからこの記事で伝えたいのは、
「正社員を辞めないほうがいい」
ではありません。
「辞める前に、一度だけ立ち止まってみてほしい」
ということです。
おわりに。「何を手放して、何を残したいのか」
正社員を辞めることが悪いわけじゃない。
アルバイトや派遣社員で働くことが悪いわけでもない。
「もっと自由に働きたい」と思うことも、悪いことではありません。
ただ、仕事がしんどくなったときって、どうしても、
「もう全部いらない」
となりやすい。
私もそうでした。
「正社員はしんどい」
↓
「じゃあ正社員じゃなくていい」
↓
「給料が下がってもいい」
↓
「とにかく楽になりたい」
と、一気に考えていました。
でも、本当はその間に、
「待って。私が正社員として働いていたことで、何を得ていた?」
と考える時間があってもよかった。
美容院に行くこと。
旅行に行くこと。
友達にプレゼントを買うこと。
好きなものを買うこと。
たまにちょっと贅沢すること。
毎月の生活を、そこまで心配せずに過ごすこと。
こういうものも、私にとっては、安定した収入があったからこそできていた「お金の自由」でした。
正社員として働いていた頃は、それを「普通の日常」だと思っていました。
でも、離れてみて初めて、
あれも私が正社員として働いていたから得られていたものだったんだな
と気づきました。
だから今は、
「自由になりたいなら、お金を諦めるしかない」
とも、
「お金が欲しいなら、しんどくても正社員でいるしかない」
とも思っていません。
自由も欲しい。
お金も欲しい。
心穏やかに働きたい。
全部欲しくていい。
そのうえで、
「何を手放して、何を残したいのか」
を考えてみる。
私も次の働き方を考えるときは、
「とにかく楽な仕事」
だけではなく、
「自分の心と生活の両方を守れる働き方」
を探していきたいと思っています。
もし今、
「もう正社員なんて無理。給料が下がってもいいから、とにかく楽になりたい」
と思っているなら。
その気持ちは、無理に否定しなくていいと思います。
ただ、決める前に一度だけ、
「今の私が、正社員として働くことで受け取っているものって何だろう?」
と考えてみてください。
もしかしたら、思っていたよりたくさんあるかもしれません。
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